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FASD(胎児性アルコール・スペクトラム)への支援

ソーシャルワーク・タイムズ vol106 子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.51

· 大学院の授業,児童福祉

実習先(CWI=児童相談所(CAS)付属の研究所)でよく聞いた言葉に「FASD」があります。FASDとはFetal Alcohol Spectrum Disordersの略で、日本語では「胎児性アルコール・スペクトラム障害」と訳されます。胎児性アルコール症候群(FAS: Fetal Alcohol Syndrome)もほぼ同じ概念なのですが、FASDはこれより少し広い意味で捉えられ、母親のアルコール摂取による子どもの発育への影響として使用されています。

具体的には妊娠中の母親の飲酒による胎児・乳児に対する低体重や発育の遅れ、顔に現れる特徴、脳の障害などです。さらに最近では、児童期や成人してからの学習障害や行動障害、精神疾患、うつ傾向などと関連があることが分かっています。

出現頻度は民族や集団によって異なるため、実は良くわかっていませんが、アメリカなどでは「出生数1000人あたり0.1-2名」という調査結果が出ていて、非遺伝性の精神発達遅滞の最多の原因となっています(厚生労働省)。

FASDは顔の特徴や成長の遅れがありますが、成長と共に目立たなくなります。しかし、普段の生活や学校生活は、成長と共に困難になることがあります。

例えば日本で「発達障害」と呼ばれる症状のように、 FASDには、集中できない、抽象的な表現が苦手、授業についていけない、行動と結果が結びつけられない、先がよめない、環境の変化が苦手などの症状があります。また、聴覚や触覚などの感覚に過度に敏感、または感じにくいという場合もあります。

さらに時間の概念に弱く、遅刻が多かったりもするので、教員からは反省していないように見えたり、授業に集中していないように見られたりもします。

カナダでは10年ほど前からFASDに対する関心が高まっています。FASDには治療法はないので、妊娠出産前の正しい知識や、早期発見、成長に合わせて子どもや保護者へのサポートが大切であるという認識の下、カナダ各地で次のことが行われています。

・FASDの診断ができる医療センターの整備&正しい診断ができる医療者の育成やガイドラインの作成

・子どもや保護者に対するサポートの充実

・学校や教員、ソーシャルワーカーに向けての研修

・妊娠を希望する親に対してFASDを予防するプログラム

・一般向けにFASDの存在を広報する

特に早い段階からの子どもに合った教育(療育)は必須です。ただし、先生向けのパンフレットには様々な注意点や工夫に加えて次のように書かれています(※)。

「FASDの子どもはその他の子どもと比べて『異なる』わけではありません。すべての子どもは、視覚、聴覚、行動など、その子の強みを生かす方法で学ぶのがベストなのです」

日本ではFASDの調査が行われたのは1990年ごろで、日本での出現頻度やFASDの子どもの数は分かっていません。妊娠中でも「コップ一杯くらいなら大丈夫」という認識もあるのですが(私自身そう思っていました!)、実はそのエビデンスは欧米からきたものだそうです。体の大きさと機能が異なるアジア人に安易に当てはめるべきではないようです。

現在の20代、30代の女性の飲酒者の割合は8割以上、妊娠中の女性の飲酒率も8.7%となっています(2010年厚生労働省)。胎児性アルコール症候群には治療法はなく、また少量の飲酒でも、妊娠のどの時期でも生じる可能性があり、妊娠中や妊娠を希望する女性は完全にお酒を止める必要があるとのことです。

カナダでは飲食店などでは「妊婦さんの飲酒は胎児に悪影響を及ぼします」というポスターも張られています。

日本で発達障害の子ども(や大人)の増加が言われていますが、原因は良くわかっていません。発達障害の理解と支援に加えて、FASDについても知られるようになると良いと思いました。

もしご興味のある方はパンフレットやウェブサイトをご覧ください。

*FASDに関するパンフレット(Children's Aid Society of Toronto) (英語)

http://www.torontocas.ca/app/Uploads/resources/fasd_booklet.pdf

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