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加害者向けプログラム拡大の背景

ソーシャルワーク・タイムズvol 108 子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.53

· 児童福祉,実習,社会福祉制度

先週は虐待・DV加害者の男性向けプログラム「Caring Dad」について紹介しました。加害者は自分の生育歴などから、対人関係やコミュニケーションに関して歪んだ認知があると考えられます。長年の考え方や行動のくせは容易には変えられませんが、正しい知識を学び、行動や思考のくせを認知することは、改善の一歩となる可能性があります。

加害者である父親向けプログラムの「Caring Dad」の最終的な目的は、親の行動が変わることや、夫婦間の関係改善ではなく「子どものwellbeing(心身の健康)の増進」だそうです。世界で加害者向けのプログラムが広がっているのには、「虐待の定義」と「子どもの権利」の考え方が根底にあるように感じています。

<虐待の定義>

カナダでは子どもに対する直接的な加害がない場合でも、パートナーにDVをしている場合は子どもへの虐待とみなされ、児童相談所の介入が入ります(日本での虐待の定義も厳密にはそうだと思うのですが…)。トロントの児童相談所(CAS)が保護する子どものうち、52%が夫婦間DVを原因とするものです。

そのため子どもに対する直接的な加害がない場合も、DVを行っている男性はこのプログラムの対象になります。

パートナーが離婚する前の「最後のテスト」としてこのグループ参加を求めたり、DV裁判の判決として言い渡されたり、その家庭を担当している児童相談所のワーカーに勧められ参加するそうです。

<子どもの権利>

もう一つ、加害者向けプログラム拡大の背景には「子どもの権利」があるように思います。

カナダでは、離婚しても共同親権が一般的で、定期的に同居していない親と会ったり、宿泊したりします。また生みの親の親権が剥奪されて、里親さんの元(や施設)、養子として新しい家庭で養育されていても、子どもには自分の出自を知る権利があると考えられ、定期的に面会をします。

虐待など加害の恐れや連れ去りの恐れがある親との面会は、児童相談所などの指定された場所で、第三者の付き添いの下に行われます

生みの親と定期的に面会することは、子どものアイデンティティの形成と、健全な心身の成長にとって重要であると考えられているのです。継続して子どもと会うため、子どものために加害者向けプログラムが必要であるという認識が、参加者の広がりの一つの要因となっているのではないでしょうか。

<加害者向けプログラムの限界>

加害者向けプログラムには限界もあります。

それらは主に1. 参加者が限られる、2.最後まで修了する人が少ない、3.効果測定が難しい、ということが挙げられます。

参加者が限られるのは、裁判所やパートナーやワーカーが参加を求めたとしても、最後はやはり任意であるためです。そして参加者のうち、最後まで修了する人は全体の半分ほどだそうです。また開催地が都市や街中に限られており、国土の広いカナダでは参加できる人が限られてしまうという限界もあります。場所によっては、数時間車を運転してくる人もいるそうです。

加害者向けプログラムは効果が測定しにくいという点もあります。Caring Dadは子どもの心身の健康を増進するのが最終目的ですが、効果測定はプログラム前後で行われる参加者(父親)やワーカーへのアンケート調査を用いています。実際に子どもにどのような影響が出たのかや、長期的な効果に対する検証は難しく、データの蓄積や継続調査が今後の課題と言えます。

Caring Dadだけでなく、北米ではソーシャルワークや治療(セラピー)の場で、グループソーシャルワークが盛んです。次回は日本でグループソーシャルワークは適切か、について考えてみたいと思います。

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