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オンタリオ州のDV・性暴力被害者支援

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.60 ソーシャルワーク・タイムズ vol115

· 非営利組織,社会福祉制度

今週末はイースター、キリスト教の復活祭です。カナダのキリスト教徒の中ではクリスマスの次に大きなイベントで、オンタリオ州の公立学校は4連休です(州によって祝日が異なります)。クリスマスと同様、家族と一緒に過ごす人が多いようで祝日ですが街は静かです。

さて、本日はオンタリオ州のDV・性暴力被害者支援についてお伝えします。カナダは州制度をとっているので、州ごとに法律も違えば、方針や施策も違います例えばお酒が飲めるようになるのはケベック州では18歳から、オンタリオ州では19歳からです。

オンタリオ州、特にトロントはカナダ最大の都市として、DV・被害者支援には本当にさまざまなサービスがあります。カウンセリング、シェルター、裁判支援、緊急医療などなど。これらのサービスで特徴的なのはオンタリオ州が採用した施策については州内で(一応)均一なサービスを提供していることではないでしょうか。ただ州が委託金を出しますが、サービス提供をするのは民間団体です。

オンタリオ州全体として性暴力・DV支援で採用しているサービスの例として「Sexual Assault/ Domestic Violence Treatment Centre」(性暴力、DV治療センター)があります。

これは性暴力・DV被害に遭った方のための緊急ワンストップセンターです。州内の35カ所の病院内に設置されており、24時間365日利用できます。

ここでは医療スタッフによる治療、検査、希望する場合には警察への通報(匿名も可)、安全計画の策定、カウンセリング、地域のサービスの紹介などが行われます。
これは1970年頃から草の根で活動してきた方々の声が州の施策として採用され、1984年に初めてのセンターが開設されました。(サービスについてはこちら:http://sadvtreatmentcentres.ca/en/view.php?key=40&menu=37&lang=en

それ以外にも、警察との連携で被害者に対する緊急保護や心理的なサポートを提供するサービス(Victim Crisis Assistance Ontario (VCAO)/Victim Quick Response Program (VQRP) )、裁判所に行く被害者や、目撃者を支援するサービス(Victim/Witness Assistance Program)もあります。

カナダでは小さな子どもも目撃者や当事者として裁判で証言することがあるので、子ども向けの支援もあります(Child Victim/Witness Program)。この中では、子ども達に裁判や証言の意味や、自分の役割をぬいぐるみなどを使って教えたり、裁判所に同行したりします。トロントには子どもが裁判所に同伴できる犬がいるセンターもあります。
また更正のために加害者に参加が義務づけられたプログラム(12週間のPartner Assault Response (PAR) program)もあります。

DV・性暴力被害者支援の施策には、オンタリオ州の28ある省庁のうち複数が関わっています。例えば、「法務省」は事件の被害者支援や加害者更正、「子ども若者サービス」は子どもと若者への支援の管轄、「コミュニティ・ソーシャルサービス」は地域でサービスを提供する福祉組織や非営利団体を管理、「健康・介護省」は被害に遭った人が受診できるワンストップサービスを管轄しています。さらに「オンタリオ女性局(The Ontario Women’s Directorate (OWD) )」という1983年にできた、女性の経済的な安定と女性に対する暴力の根絶を目的とした省もあります。なお職場でのセクシャルハラスメントや暴力防止は労働省が管轄しています。

先ほども述べたように、カナダの福祉サービスは、民間団体が提供しているので、プログラム毎に委託金・補助金の助成先の省庁や団体が異なることもよくあります。
様々なサービスがあることはもちろん歓迎すべきですが、どこで、どの団体が、どのようなサービスを提供しているのかよく分からないかったり、サービスは存在するけれど被害者が自分で探してアクセスしなければならず、まず支援につながること自体が困難という短所もあります。さらにサービスが重複してしまい、助成金の取り合いのような競争関係になってしまう団体や地域もあります。

そのため最近では、様々な団体が共同でDV被害者のための「コミュニティハブ」を立ち上げ、それぞれのリソースを生かしてカウンセリングやグループを提供する「センター」が出来つつあります。
例えば2013年にオープンしたYork Region Centre for Community Safety(YRCCS)(http://yrccs.ca/)では、利用者がいくつもの組織に行ったり、同じような初回面談を何度も繰り返す必要がないように、サービスをコーディネートして、一つの場所で提供したり紹介したりしています。YRCCSのパートナー団体は27にのぼります。関わっている組織はそれぞれ自分の団体や場所でもサービスを行っています。
これは地域のサービスが重複したり不足したりしないように調整した上で、利用者にアクセスしやすくする必要性から出てきたものでもあります。

また最近では助成を行う側からの圧力(助成金額の削減(増やさない)ことと効率的なサービス提供を行う)もあり、サービスの重複などがないように、小さな福祉団体を比較的大きな団体に統合、吸収させるという動きが出てきている影響もあるように思います。オンタリオ州で福祉サービスの提供を行う非営利団体は、公的事業の委託や補助金、助成金などで行っていることが多いため完全に「市場型」であるとは言えませんが、自ら公的・民間を問わず補助金や助成金を獲得しに行く必要があるところが多いので、団体ごとの「自助努力」が求められていることは間違いありません。

DV・性暴力被害者への支援など、クライアントに料金の負担を求めにくい性質のサービス提供をする団体は、オンタリオ州や市や民間団体の補助金を受けていても、財政的に厳しい状況があると言われています。利用者への利便性とサービス提供の必要性はもちろんですが、それだけでなく財源を提供する側からの要請が、「自発的な」団体同士の恊働とコミュニティハブの創出につながっていることが想像できます。

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