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カナダの児童福祉:CAS

ソーシャルワーク・タイムズ vol68 子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.14より転載

· 非営利組織,児童福祉

私が滞在しているカナダのトロントには日本から送られた2,000本の桜が植えられている公園があります。満開になるのは5月半ばとのことで、今からお花見をするのが楽しみです。ただしオンタリオ州ではお店の敷地や家の庭以外で野外の飲酒は禁止なので、お花見でのアルコールはなしです(泣)。

さて、先週子どもの虐待の悲しいニュースが流れてきました。そこで今回から2回に渡り、カナダ・トロントの子どもの福祉と児童相談所についてお伝えします。実はカナダは子どもの福祉の発祥国とも言われています。日本で広く導入されてきているNobody's Perfect(完璧な親なんていない)プログラムもカナダ発祥。他の福祉分野と比較しても、予算が割かれていることからも子どもの福祉が重要視されていることが分かります。

<オンタリオ州の児童相談所:CAS>

オンタリオ州ではChildren's Aids Society(CAS)という非営利組織が、日本の児童相談所の役割を担っています。CASは虐待などの緊急を含む子どもの保護や家族への支援、里親や養子縁組の取り組みなどを行っており、24時間、365日相談を受け付けています。

CASはオンタリオ州を47の地域に分けて、各地域に設置され、それぞれ別組織として運営されています。トロント市と近隣の市・地域を含むGTA(Greater Toronto Area、以下トロント)を担当するのが、CASトロントです。CASトロントだけで、職員が800人ほどいる巨大組織です。これは子どもの保護を担う組織では、北米の中で最大規模です。トロントには他に、ユダヤ人CAS(Jewish)、先住民CAS(Native)と、カソリックCASがありクライアントの属性によりどこで対応するかが異なります。

実はカナダでは福祉サービスを提供する組織のほとんどが民間の非営利組織。CASも1875年に創設された乳児院が元になっている民間非営利団体です。ただし民間と言っても、現在はそのほぼ100%が国や州の予算でまかなわれており、公的機関のような役割を担っています。

<トロントCASのケース数>

トロント(GTA)の人口は約600万人です。その中で法的に「子ども」にあたり、虐待があった場合にCASが保護する義務がある16歳未満は約50万人。2013年にCASが扱ったクライアント数(子どもと家族合わせて)は、約4万人でした(※1)。

一方、東京都の人口は約1,335万人。児童相談所が扱う18歳未満の子どもの数は約180万人です。2014年度の相談受理件数は約1万8千件(+電話相談8千件)でした(※2)。東京都の子どもの数はトロントの3倍以上ですが、児童相談所の相談受理件数は半分ほどとなっています。これは日本と比較してカナダで虐待が多いからというわけではありません。いくつかの要因が考えられますが、一つには介入の度合いが異なることがあります。

例えば、カナダでは、子どもに直接的な虐待が行われていなくても、子どもの養育環境が整っていないと考えられる場合には、介入や支援が行われます。2013年に対応したケースのうち、ネグレクトを含む「虐待」は45%でしたが、それ以外に夫婦間のドメスティックバイオレンスに関連するものが約30%、そして保護者の養育能力に関するものが25%ありました(※1)。

<CASの職員>

CASの対応ケース数が多い理由は、ソーシャルワーカーの多さも関係しているでしょう。トロントCASの職員数はフルタイムに換算して約800人で、そのほぼ全員が資格を持ったソーシャルワーカーです(MSW :ソーシャルワーク修士取得者がほとんど)。

一方、東京都内の児童相談所の職員数は約700名ですが、常勤は500人、非常勤が200人です。

ソーシャルワーカーにあたる児童福祉司(ソーシャルワーカー)は196名で、児童心理司は65名です。児童福祉司一人当たたり、年間93件のケースを担当しています(※2)。トロントCASの一人の職員が一度に受け持つケース数は10数件ほどで、入職してから間もない職員はもっと少ないそうです。

なお、CASは民間団体ですが、全員組合に入っており、いわゆる公務員のような扱いです。現在募集中の求人によるとお給料は7万1千ドルから8万7千ドル(日本円で700万円〜850万円くらい)で、トロントの福祉関係の仕事の中では、一番給与が高いくらいと言われています。

児童虐待のケースには、深刻なものや対応が長期に渡るものもあります。そのためカナダでも児童福祉分野のワーカーは、燃え尽きやすく、離職率も高いことが問題となっていました。このような状況に対し、CASでは労働環境を整えるなど対策をしています。

その一つがスーパービジョンです。CASでは全職員に対し、1週間から2週間に1回(入職間もない場合は必ず週1)スーパービジョンを受けることが義務づけられています。また、スーパーバイザーを養成するトレーニングなどや、他のトレーニングも定期的に行われています。

(なお、2016年にCASトロントはカナダの「多様性のある組織トップ100」に選出されました)

次回は、子どもの施設入所と里親制度についての考え方についてご紹介します。

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