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トロントの公立老人ホーム訪問

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol. 58 ソーシャルワーク・タイムズ vol113

· 高齢者福祉,社会福祉制度

3月8日は国際女性デーでした。現在、ソーシャルワークのコースと並行して副専攻として「アジア太平洋地域研究」の授業を履修しています。国際女性デーの前日のクラスは、ちょうどアジアの女性と労働についての回でした。男女の賃金差は、OECD加盟国の中で日本はワースト3位、韓国でワースト1位と深刻です。少子高齢化とも関連して山積する課題は、これまでの政策や制度ではどうにも解決できておらず、人々の価値観や生き方の変革が必要なのではという議論になりました。

ちなみに副専攻プログラムは、希望者が自分の大学院の専攻に加えて、別の分野が同時に学べるものです。今年の「アジア太平洋研究」プログラムの履修生は12人で、主専攻が政策研究、MBA、社会学、社会福祉などそれぞれです。授業は講義はなく、宿題のリーディングに基づいて議論をします。

 

大学院の副専攻プログラムは、アジア研究以外にも色々なものがあり、様々な視点で議論ができることと、自分の学部だけでは知り合えない人と出会えるのが醍醐味だと思います。

 

受講生はカナダ人(中国系カナダ人、香港出身者、日本や中国や韓国に滞在していた人など)の他、中国人、トルコ人、エジプト人、ベルギー人、日本人(私)など多岐に渡ります。トロント大学は英語が母語でない人もかなり多いので、「日本人で、英語は第2言語で」と言っても「ふーん…」という感じで、議論の際に特に手加減はしてくれません(泣)。

 

さて、先日、友人がソーシャルワーカーとして勤めるトロント市立の老人ホームを見学してきました。

 

トロント市立の老人ホームは10施設。公費補助が出る老人ホームはトロント市内に37施設あります(トロント市の人口は約280万人、高齢化率は約15%)。いわゆる有料老人ホームはまた別にあります。

 

今回、訪問した施設はその中でも古い方で、1965年に設立されたんだとか。トロント市立の老人ホームの多くが現在、老朽化が目立っており立替が進んでいますが、この施設は一部が歴史的建造物に指定されているため、勝手に立て替えることができないそうです。

 

トロントでは町並みや歴史的建造物を保存するために、指定された地域の建物は私有地であっても勝手に立て替えることができません。内部のみ改装したり、ビルに立て替える場合でも、一部外壁を残したりしています。

 

以前見学した民設民営の老人ホームが新しく、すべて個室か2人部屋で広々としていて、大型の家具や絵画を持ち込んでいたのと比較して、今回見学した施設は、全ての部屋が2人から4人。ベッドはカーテンで仕切られており、個人スペースはベッドとその周辺だけという感じで、雰囲気がかなり異なりました。

 

この施設は全部で250床でソーシャルワーカーは2人。ソーシャルワーカーは主に入所、退所、家族への連絡やケアカンファレンスなどの調整業務などを行っています。

 

この施設の最もユニークな点は、中華系移民のための専門フロアがあることではないでしょうか。移民1世の場合は英語が全く話せない人も多いため、介護職員も中国語を話せる人が採用されているそうです。多民族都市であるトロントの施設には、日本(日系)人、韓国人(韓国系移民)の人のためのフロアがある施設や、ユダヤ人によるユダヤ人のための施設もあります。

 

この施設には日本の「老健」にあたるベッドが9床あります。この枠は、病院から来た方がリハビリのために入所するものであり、90日以内に退所しなければなりません。ただし90日のリハビリを経ても自宅に戻れる方は少なく、一旦帰ってもまた病院やホームに逆戻りということもよくあるそうです。日本の老健と、システムも問題点も似ているのでびっくりしてしまいました。ショートステイ用のベッドも1床あるそうです。

 

また印象的だったのは、タバコやアルコールがOKなことです。週に2・3回「ハッピーアワー」と言って地下にあるバー(キッチン)が解放され、アルコールをオーダーすることができるそうです。また体が元気な方は自分で店に買いに行き部屋で飲酒することもできます。

 

今、課題となっているのが高齢者施設で「ハームリダクション」のアプローチをどう取るかということです。ハームリダクションとは、アルコールや薬物の使用に際して(依存があったとしても)、その使用を一律に禁止するのではなく、その使用に伴う危険性をなるべく減らすような方法を取るというアプローチです。

 

次回は、この「ハームリダクション」について考えてみたいと思います。

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