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研修:障害がある方への配慮と労働者の保護

ソーシャルワーク・タイムズ vol89 子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.35

· 児童福祉,非営利組織,実習

朝晩急に涼しくなって来たトロントです。暗くて寒い冬が来るのが今から恐怖です…。さて、先週から2年目の実習が始まりました。実習先は子どもの福祉を扱う大きな非営利団体です。初日はオンラインで、いくつかの研修を受けました。今回はその研修内容と感じたことをお伝えしたいと思います。

今回は州が提供している動画を使った研修を2種類受けました。前半は障害などにより配慮や支援が必要な方への対応についてをテーマにしたものでした。これはAODAトレーニング(Accessibility for Ontarians with Disabilities Act)と呼ばれており、ボランティアやアルバイトを含む、オンタリオ州のすべての労働者に受けさせるよう雇用者に義務づけられているものです。

AODAトレーニングの1つ目のビデオは、お客さん(クライアント)に障害がある場合という立場で、障がいの基本的知識、不便になることの具体的事例や、全ての人にアクセシブルな環境(障害があってもなくても利用しやすい、いわゆる「バリアフリー」)とするためにすべきことを学びます。2つ目のビデオは、雇用者や同僚の立場から、障害がある方と一緒に働く際の差別の禁止と、どのような環境を整え、支援や配慮を行うべきかについてでした。最後に「障害や必要な配慮はそれぞれ異なるので、決めつけずに『何かお手伝いすることはありますか?』と聞いてください」と言っていました。

オンタリオ州では2025年までに、アクセシブルな環境を整えるため、組織の規模に応じた達成目標を設定しています。例えば…、2012年までに障がいに配慮したサービス提供を実施、2015年までに当該項目に関する組織規約を作る、2016年までにすべての雇用者に研修を行う、2018年までに駐車場を含めたすべてのスペースをバリアフリーにする、2020年までにコンプライアンスレポートを整え常備する、などです。

日本も2016年4月に「障害者差別解消法」が施行され「合理的配慮」が義務化されます。日本では今でも介助犬を連れた方がお店に入ることを断られることがあるなど、障がいに関する理解が進んでいない様子を見聞きします。各業界や施設でどのような配慮が求められており、それをどう実施するのか、労働者に分かりやすく周知する必要があります。このオンライン研修は基本的な内容で全てをカバーするものではありません。しかし州がオンラインビデオの形態で(もちろん字幕と音声つき)研修内容を提供していることで、雇用者側の負担がなく、すべての組織ですべての労働者に対し、簡単に研修が実施できるので良いアイディアだと思います。

次のオンライン研修もオンタリオ州の労働省が提供しているもので「安全と健康に関する研修(Health and Safety Awareness Training)」でした。労働者の健康と職場の安全を守るために、現場で決められているルール(手の消毒から建築現場での安全管理など)を守りましょうという啓発ビデオ(クイズ付き)です。この中では、実際に仕事中にけがをされて障がいが残った方、家族が亡くなった方からのビデオメッセージも流されるなどインパクトが強いものとなっていました。また「(工場や建設現場の環境など)場合によっては、すぐに健康被害がでないこともあるので注意してください」と述べられていたのが印象的でした(4年半前の政府の言葉と真逆だな…と)。

さらに印象に残ったことは「使用者は労働者の健康と安全を守る義務があります。労働者は守られる権利があります。職場でルールが守られていない場合には、労働者はそれを報告する義務があります」と強調されていた点です。職場環境について相談できる州の窓口や、ウェブサイト、電話番号も紹介されていました。この研修も2014年7月からすべての労働者が受けさせなければならないと決められています。

今、日本ではブラック企業、ブラックバイトが問題になっています。私も専門学校で教えていた時に、若い学生さんは、労働法や働く人の権利を驚くほど知らないことを実感しました(誰にも教えてもらっていないので当たり前ですよね)。また知っていたとしても、弱い立場なので是正を訴えることなど出来ないのが大半です。今回のオンライン研修のように、働き始める前に「会社は労働者を守る義務がある!」と言ってくれる機会が一度でもあると非常に心強いものなのだと実感しました。

この研修を受けた時、さすがに権利意識の強い国だなーと思ったのですが、よく考えると労働者の健康と安全を守ることは、州や国の医療費や、障害が残ってしまった場合に支払われる生活保護費など、社会保障費の削減にもつながっているのだと思います。労働環境の整備と法律の遵守によって労働者の健康と安全を守ることは、長期的にみて雇用者(と労働者と国や自治体に)利益を生み出すものであることは明白なのですから、日本もすぐに取り組むべき課題であると感じました。

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