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外国人家事労働者の光と影

ソーシャルワーク・タイムズ vol73 子連れソーシャルワーク留学 vol.19

· 移民政策,児童福祉

前回はカナダで保育園を探すのが難しく、保育料もとても高いことをご紹介しました。ちなみにオンタリオ州のお隣のケベック州では「ユニバーサルチャイルドケア」といって、12歳まで全ての子どもが一日7.3ドルから保育が受けられる制度があり(生活保護や失業中の場合はより安い)注目されています(金額は2015年当時)。

さて、カナダでは家庭で保育や高齢者ケア、家事を行う労働者(ケアギバー)を東南アジアなどから受け入れています。この制度を使って、外国人労働者を「ナニーさん(ベビーシッター)」として雇っている共働きの子育て家庭もあります。ケアギバーはこれまで住み込みが原則だったのですが、2014年秋から通いでもケアギバー専用の労働ビザが発行されることになりました。

保育園に預けるよりもナニーさんの方が家庭的な環境で保育できること、長時間の保育が可能で、家事もしてくれるなど融通がきくこと、そして何より経済的であることなどの理由で選ばれています。また東南アジアの方は英語が堪能な方もいるので、言語の壁が低いという事情もあります。

日本でも家事労働を担う外国人労働者の受け入れが検討されています。子どもがいても働き続けたい、また働かざるを得ない状況にある女性が多いだけでなく、日本経済が女性の労働力を必要としている事情があります。親が遠くにいて助けを求められなかったり、親の介護をしながら子育てをしている人も多いです。かと言って「お手伝いさん」は高額で、簡単に頼めるものではありません。私も共働き当事者として、働きながらの子育ての大変さを実感しています。このような状況で「(安い労働力である)外国人家事労働者に来てもらおう」という発想になるのは当然のことなのかもしれません。

しかし、外国人家事労働者の受け入れについては慎重に考えなくてはなりません。実際にカナダでおこっていることですが、外国人労働者の立場は非常に不安定です。外国人ケアギバーは雇用者との直接雇用が原則なので、万が一「相性が合わない…」などと解雇されてしまうと職だけでなく、住み込みの場合は住居も、そして滞在資格すら失ってしまう可能性があります。

またカナダでも外国人労働者に対して(国の政策として経済移民を受け入れているにも関わらず)、「『外国人』や『移民』が『カナダ人』の職業機会を奪っている」と言う根強い差別があります。

カナダでナニーをしている人は圧倒的に女性が多く、母国で子どもがいる人も沢山います。そのような子どもは、母国で祖父母や親戚に育てられたり、国内で更にナニーさんが雇われたりしています。国内のナニーさんはより安く雇われているというスパイラルがあります。多くの外国人労働者は自分の家族や子どもを本国に残して、家族の生活を支えるために、遠くの先進国の子どもをお世話をしているのです。

カナダでは一定期間のフルタイム就労をした場合には永住権を申請することができます。就労ビザの場合はフルタイムで1年以上、ケアギバービザはフルタイムで2年以上の就労が必要だそうです。そのため将来的に家族と一緒にカナダに移民することを目的として、ケアギバーになる人もいます。2008年から2013年の間に6万人以上のケアギバーの方が永住権を取得しました。しかし、日本の外国人労働者の受け入れ条件は「単身かつ上限3年」などと議論されています。これはまるで「使い捨て」のようではありませんか。

カナダでも永住権取得の要件は毎年変わり、近年ではより厳しくなってきています。家事労働者の場合、移民申請から取得までに平均5年もの時間がかかると言われ、常時約5万人のケアギバーが永住権が出るのを待ち続けている状況です。そのため「自分の子どもとは、もう5年も会っていません」という方もいます。(移民申請中はケアギバー以外の仕事をすることが可能だそうです。)

外国人家事労働者の受け入れについては、保育や家事のニーズだけでなく、少し大きな視野で考えなければならない課題です。それは子どもを産む、子どもを育てる、家事をする、介護をするといった「再生産労働」の多くが女性の役割となっており、現在では国境を越えて、先進国から発展途上国の「女性」に転嫁されているという点です。

次回は、家事、育児、介護などの無償労働が女性に多く担われていることについて考えたいと思います。

参考:Become a permanent resident – Live-in caregivers(カナダ政府のサイト)

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