冬季うつについてー人は自然の中で生きているー

 

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol. 93 ソーシャルワーク・タイムズ vol.159

· メンタルヘルス

2月のトロントにしては珍しく春のような日が続いており、びっくりしています。

さて今回は「冬季うつ」のお話。「冬季うつ」または「季節性うつ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。英語ではSAD=Seasonal Affective Disorder といいます。

これは短い冬場に、うつのような症状になることです。

カナダでも冬が長く、その間の日照時間が短いので、(冬至近くになると朝は8時ごろまで暗く、午後4時すぎには暗くなってしまう)ので、「うつ病」という診断まではされなくても、なんとなくやる気が出ない、うつっぽい気分、不機嫌になる、過眠、過食などの症状が現れる人がよくいます。

Canadian Mental Health Associaton (CMHA)によるとカナダに住む人の人口の2~3%が、人生の中で一度は季節性うつになるそうです。さらに15%は、社会生活が送れる程度の軽度の「季節性うつ」を経験するとのこと。うつ病の10%がこの季節性うつなんだとか。

その防止や軽減のためか薬局では「ビタミンD3」や「オメガ3」などのビタミン剤がよく売られています。

オメガ3の成分増強の卵なども販売されています。トロントでは新鮮な青魚を食べるということがあまりないので、自然にこれらの栄養をとることが難しいという理由も影響しているかもしれません。

冬季うつは日光に当たることで60~80%の人の症状が軽減するといわれています。そのため、日光のような強い光を作る照明も売っています。日光って大切なんですねぇ。

また、お風呂にゆっくり入る、適度な運動などもよいと言われています。カナダでは湯船には入らずシャワーで済ませる人も多いですが、スポーツジムに行ったり、ダンスやヨガなどを習って体を動かす習慣をつけている人はかなり多いように感じます。

子どもたちの小学校・中学校では、お昼休み時間には、どれだけ寒くても(氷点下10℃などでも)晴れていたら必ず外に出なければならないと決められているようです。これは、少しでも日光に当たるためではないかと思います。

私もカナダに来たばかりのときに「ビタミンD」飲んだほうがいいよ、と知り合いにお勧めされました。その時は「大げさだなあ」と軽く考えていたのですが…

カナダ3年目の2017年冬。鬱々とした日々に「あれー?!これってもしかして…」と。学生の時と違い、日中は働いているために出歩くことが少なくなり、日光が足りていなかったのかもしれません。そこでビタミンD剤を飲み始めました。結果は、プラセボ効果かもしれませんが、なんとなく効いているような気がします。

春になると自然と回復するといわれる冬季うつ。日本にいるころにも、春の暖かい日は気持ちが良いなあ…くらいには思っていましたが、これほどまでに季節・気温・日照時間によって、体の中で作られる栄養が、人間の心身の状態に影響を及ぼすとは人は自然の中で(そして社会の中で)生きているということを実感します。

カナダでは冬場は(も)キリキリ働くということはあまりなく「なんとなく不機嫌な人が多いよね、でも仕方ないよね、冬だから」という感じで、何かあってもゆるーく受け止めてくれる適当さもある気がします。夏になったらなったで「夏だからしょうがないよね。仕事はほどほどに、短い夏を楽しまなくちゃね」となるのですが(苦笑)。概ねおおらかな国民性であります。

都会にいると、自分の意思で生活をしている気分になりますが、自然や社会状況に影響されている自分の体の状態にも敏感になって、必要であればケアしてあげたいと思う今日この頃です。

日本の皆さんもどうかセルフケアしてあげてください。