クリスマスは寄付の季節

 

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol. 88 ソーシャルワーク・タイムズ vol.151

· 組織論,貧困

2016年12月中旬、トロントはで急に寒さが厳しくなり、吹雪の日もありました。交通機関は乱れるし(といっても、もともとこちらには時刻表がなく「このバスは10分に1本程度」的な表記があるのみ)、積雪の中で歩くのは慣れず全身疲労…。冬は色々と大変です。 

そんな悪天候の中でも、クリスマス前ということで、皆さんショッピングで忙しそうです。カナダではクリスマスは一年で一番大きな行事と言っても過言ではありません。ちなみにカナダやアメリカでは、いろいろな宗教の人がいるので「メリークリスマス!」と言わず「ハッピーホリデー!」と挨拶する人も多いです。 

この時期は、家族や友人に様々なプレゼントを渡します。子どもだけではなく、親、兄弟姉妹や親戚などにギフトを準備するのです。学校の先生などにチョコレートやギフトカードを渡す人もいます。 

一方、プレゼントを贈り合うのをやめよう!と主張する人もいます。「『プレゼント何が欲しい?』と聞かれたら『私にプレゼントする代わりにここに寄付して欲しい』と伝える」という人も増えてきているようです。 

もともと北米には寄付の文化が根付いているようで、寄付だけでなく、街にいるホームレスの方などにもお金や食べ物を渡すのをよく見ます。 

「寄付」はクリスマスの時期に、いろいろな場所でよく見かけます。街中や学校には「◯◯ドライブ」(フードドライブ、ホリデイドライブなど)という、プレゼントや食品、現金、小切手(そう、カナダでは小切手を使っているのです!)を集める箱が設置されています。

贈り先はシェルターに住む方や、金銭的な困難がある方など。団体で助けを必要としている人をリストアップして、希望のものを聞き、寄付してくれた物品や、集まった寄付で購入してプレゼントするのです。 

この時期は、お店のレジで寄付を呼びかけていることもあります。さらに、寄付を呼びかける電話がかかってきたり、家に直接訪問が来たり、街中で寄付や募金のお願いをしている団体もあります。最近は、路上でもその場でクレジットカードで寄付をしたり、マンスリーサポーターなどに登録することができるシステムを導入している団体もあるようです。 

実は、北米には寄付集めを専門にする会社があります。福祉施設や病院、非営利団体の委託を受けて、街中や、戸別訪問、電話で営業活動を行っているのです。吹雪の日にも外に立って、道行く人々に声をかけていて、正直大変そうでした…。 

さて、登録された非営利団体(病院や施設、宗教団体を含む)に寄付やプレゼントを贈ると(20ドル以上の場合)領収証が発行され、確定申告をすることができ、寄付をした約30-40%の額が戻されます(※)。毎年12月末までに払ったものが対象になるため、この時期に寄付をする人も多いのではないかと思います。 

寄付額の一部が「戻される」というのは支払うべき税金の額から差し引かれる=税額控除されるということです。もし納めるべき税金がなければ、この額は戻ってきませんが、大抵の会社勤めの人は源泉徴収されているので、差額が戻ってくることになります。 

これは今、日本で「認定NPO」という組織が増えつつありますが、そこへの寄付に対する税金の仕組みと同じです。 

例えばサスカチュワン州で年間400ドルの寄付をした場合。政府分の控除は88ドル、州の分は52ドル、合わせて140ドルが納める税金から引かれます。 

確定申告できる寄付額は自分の収入の75%(!)まで(その年に亡くなった方の場合は100%まで)。 

カナダでは、病院や福祉施設、シェルターなどの非営利組織だけでなく、自治体、宗教団体、アート系の団体、国連(!)などの寄付も控除されます。 

カナダ政府のwebサイトには、税額控除の計算機なども用意されており、これを使用して年内に一定額を寄付しようとする方もいるようです。 

寄付文化が根付いているのは、寄付した人のためにもなる仕組みがあってこそ、なのだと思います。実は日本の認定NPOは取得がとっても大変…。日本でももう少し小さい団体や多様な組織に対しても、寄付のハードルが下がるといいなと思います。皆さんの団体では積極的に寄付を集めていますか?どのように寄付を呼びかけていますか? 

※参考:カナダ政府webサイト(英語)