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権利を主張することと、文句を言うこと

ソーシャルワーク・タイムズ vol.149 子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.86 より転載

· カナダ生活,教育制度,小中学校

最近カナダで、「自分の権利を主張したり、意見を言うこと」と、「ただ文句を言うこと」は違うのだなぁと実感したことがあったのでご紹介します。

先日、高校の説明会に行ってきた時の話です。カナダの高校は義務教育なので、全員が進学します(10年生(16歳)が終わると中退できてしまいますが)。高校には通常、住んでいる地区に基づいて指定された学校に進学することができます。トロント教育委員会(TDSB)の場合には、学区外の学校へも2校まで希望を出すことができます。

その他にトロントでは、数学・サイエンス系、デジタルアート系(CGなどのコンピュータースキルと美術を合わせたもの)、芸術系(音楽・ダンス・美術)、ビジネス系、インターナショナルバカロレアなどの専門コースがあり、こちらも2校まで希望を出すことができます。専門コースには選抜があり、学校の成績、実技、作文、テスト、面接など、学校によって異なる基準で選ばれます。高校は9年生(日本の中3)から4年間で、この選抜は8年生(日本の中2)の冬頃に行われます。専門コースは2つしか受験できないので、とても倍率が高いコースもあるそうです。

先日この説明会に行ってきたのですが、Q&Aの時間に出された質問に「すごいなー」と思いました。
一つは「受験の日は、すでにバケーションに行く予定が入っているので試験が受けられません。選抜の日の前に、試験を受けられませんか?」と聞いている人。これに対し先生は「それについてはあとから個別に相談してください」と普通に答えていました。

「バケーション」の意味にもよりますが、多民族・多文化のトロントは長期休みに(選抜の日は長期休みではありませんでしたが)故郷に帰国したり、宗教ごとに祝日が違ったりすることがあるので、学校側も様々な配慮をしています。

またこんな質問も。「ここに来ている人数を見る限り、定員よりも希望者が多そうなのですが、受験者が多い場合、コースの定員を増やしてもらえませんか?」というもの。校長先生は「うーん、それは教育委員会の判断なので、学校側ではなんとも…」と答えると、別の親から「じゃあ、みなさん、教育委員会に対して、私たちの要望を伝えませんか?ここにいる全員が意見を言えば、定員を増やしてくれるかもしれませんよ!親は場合によっては先生方より発言力が強いのですから!」と言っていました。

上の二つの発言には、さすが「権利」の国だなーと思いました。

自分たちの要望や希望を伝える。そして制度や決まりを変えようとする。子どものころから、そういう教育がされてきているように感じます。

以前、息子(小5)のクラスで、「模擬国会」をやって「法律」を作ったことがありました。その時は「授業中にガムを食べていい法案」が可決され、実際に学校で禁止されていたガムが教室内でOKになりました!理由は「集中できるから」だそうです。


でも、正直、日本人の私には、言った者勝ちみたいに見えたり、個別対応しすぎじゃないですか?と思うことも、時々あります。声が大きい人の意見が通るのはなんだかなあ、、、と思う時もあります。

一方で、この国の人ってあまり『文句』は言わないんだなーと思ったこともあります。例えばバスや電車がかなり遅れても、運転手さんに文句を言っている人をほとんどみかけません。この理由は、いくつか考えられます。

1.交通機関を待たされるのに慣れている。

2. 社会や会社も、時間におおらか。ちょっと遅れてもまあ、大丈夫。

3. バスが遅れるのは会社の問題なので、運転手や駅員さんに言っても仕方がないと思っている。

4.運転手・車掌さんには、丁寧に対応しなければならないと法律で決められている。暴力的な言い方をすると罪に問われる。

5. 他人に対して尊厳を持った対応をすることが社会的に求められている

など、でしょうか(必ずしも全員がそうというわけではありませんが)。

そういえば、スーパーのレジの人はかなり無愛想で、商品をポンポン投げるような人もいるのですが、それに対して文句を言っている人は、私の見る限りいません。

それは、レジ係の人の賃金が高くないことをみな理解しており、労働者は報酬に見合ったサービスを提供する、顧客も支払う金額に応じたサービスを受ける、と理解しているからかもしれません。また、カナダではお客さまは「神様」ではなく、同等、もしくは物を売ってあげている店側の方が偉いと考えているようにも思えます。最低賃金で働くようなレジ係にも感情労働が求められる日本は本当に大変だ。。。

この国では、権利を主張したり意見を伝えるのと、文句を言うのは違うのだな、と改めて思いました。さて日本ではどうでしょうか。以前、「暴走老人」なんて言葉も聞かれましたね。そういう人たちは「権利を主張している」のでしょうか。「意見」でしょうか。それとも「文句」でしょうか。

 

権利をじょうずに主張して、いい方向に社会や制度を変えていければいいなと思いました。

 

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