組織を変える8つのステップ(4)

 

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol. 69 ソーシャルワーク・タイムズ vol.125

· 組織論

北海道で行方不明になっていた7歳の男の子が6日後に無事に見つかるという事件がありました。無事で本当に良かったですね。このニュース、カナダでもトップで伝えられました。ニュースでは「しつけとして両親によって森に置き去りにされた」という部分が強調され「日本ではこの親は処罰を受けない可能性が高い」と付け加えているものもありました。

カナダでは子どもの虐待に非常に敏感で、子どもの権利擁護と保護に関して、世界的に先進的な取り組みをしていると言われます。

この両親の行為の是非は、しつけの概念の違いや文化や社会状況にもより異なるので、簡単に問うことはできません。しかし、もしこれがカナダであったと考えると、きっと即、警察と児童相談所の調査が入り、場合によっては両親が逮捕されるかもしれません。

カナダでは例えば10歳くらい以下の子どもを一人で留守番させておくことや、学校の送り迎えをしないで一人で行かせることもネグレクトや子どもを危険にさらす行為であるとみなされることがあります。

今回、男の子は身体的には無事だったそうですが、とても不安な日々であったと思います。トラウマ(PTSD)等への対応などを含めて、長いスパンで心理的なケアが必要だと思います。

さて、先日からお伝えしている組織を変える8つのステップ、本日はステップ3をお伝えします。

ステップ3は「変化が必要であることを明確にするClarifying the change imperativeというものです。

これはステップ2で得た協力者の方々と変化のための「ビジョン」を明らかにする作業です。「ビジョン」なんて所詮、理想を語っているだけ、などという批判もありますが、ビジョンがなければ変化のための具体策は出てこないので、抜かしてはならないプロセスだとプロルは強調しています。

このステップではメンバー間で次のようなことを話し合い、変化が必要であるということをより明確にします。

・現状の問題点は何か

・変化へのビジョン(目的や目標)

・変化によってもたらされる結果

・変化に必要なリソース(経営側のサポートを含む)

これらを文章としてまとめて(可視化)、メンバーで共有します。

この作業はメンバー間の意見のすり合わせや、同意が必要なので時間がかかることもありますが、ぜひくじけないで行ってください。

文書としてまとめるための話し合いの過程は、ビジョンを明確にするということだけでなく、様々なステークホルダー(受益者)であるメンバーのコミュニケーションを促します。少し大変な作業かもしれませんが、これを行うことでその後のステップが加速度的に早くなります。

なお、組織に変化を起こす過程では組織の弱みや問題点などに注目しがちです。でも、同時に組織の強みにも注目すべきです。どんな組織であっても強みがあり、それを自覚し利用していくことは、変化の過程できっとプラスに働きます。

ここで一つ練習です。みなさんが変えたいと思っていることがある組織やグループの強みを5つ挙げてみてください。

すぐに思い浮かぶでしょうか。この時のヒントは「弱みだと思っていることは強みかもしれない」ということと「今・ここ」に注目することです。

蛇足ですが、個人としても、マイナス思考に陥っている時には、自分の弱みや問題点ばかり注目しがちです。

そんな時「今・ここ」に集中することが大切なのではないかと思っています。現状をフラットな状態で見つめ、今の状態をプラスでもマイナスでもなくゼロと捉えると、そこから何ができるのか改めてリセットして考えることができるのではないか、と思います。

リセットはソーシャルワーカーや福祉職にとって大切なスキルの一つです。北米のソーシャルワーカーの中でマインドフルネス(今の自分の心身の状態に集中する瞑想に近いもの)が流行っているのには、そういった意味もあるのかなと思います。

それでは今回はこのへんで。次回、ステップ4. 現状を正しく認識するです。