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子どもの貧困対策の基金と自立応援プロジェクト(2)

ソーシャルワーク・タイムズ vol95 子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.41

· 非営利組織,児童福祉,民営化

カナダでは先日、国政選挙があり野党の自由党が勝利しました。これで約10年間続いた保守党のハーパー政権が交代することとなりました。新首相のトルドー氏は43歳。特に若い世代ではこれから何か変わりそうと、ワクワクした雰囲気があります。こちらに住む外国人も移民政策が何か良い方向に変わるかも、という期待があるようです。

ちなみにカナダでは18歳から選挙権があります。小中学校でも模擬選挙が行われたり、選挙期間中は子どもたちも選挙の話題で盛り上がっていたようです。日本でも来年から18歳から選挙権を得ます。日本では教育の中立性が求められるため、選挙や政治について教えることに対し非常に慎重になっていますが、日本でも小さいころから様々な意見を聞いて考えたり、議論したりする機会が豊富にあると良いと思います。

さて先週に続いて、政府が創設を発表した「子供の未来応援基金」についてです。これは民間資金を中心とした寄付によりNPO等の事業に対して助成するもの。これは政府の推進する「ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクト」の一環です。

政府の進める自立応援プロジェクトとは次の6つの分野からなります。

1.自治体のワンストップ窓口の整備

2.生活を応援(子供の居場所作り)

3.学びを応援(子供の学習支援の充実)

4.仕事を応援(就職に有利な資格の取得(親への))

5.住まいを応援(子育て世帯の住居の安定確保)

6.社会全体で応援 (子供の未来応援国民運動を展開、基金創設)

このプロジェクトの内容(基金だけではなく)を見てみると

「平成31年までにひとり親家庭の子供の生活・学習支援を年間延べ50万人分提供」(2.生活を応援)や

「平成31年までにスクールソーシャルワーカーを1万人(全中学校区に一人)配置」(3.学びを応援)など、実現して上手くいったら子どもの貧困対策に効果があるかも、と思えるような施策も(小さい文字で)並んでいます。

が…同時に、つっこみたくなってしまう内容が多いことも事実です。ご関心がある方は内閣府の資料をどうぞ http://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/kokuminundou/pdf/k1/s1.pdf  

例えば「1. 自治体のワンストップ窓口の整備」で、赤字で強調されている施策には…

・「窓口の愛称・ロゴマークの設定」(ええ、まあ、そうでしょうけど、それが最初のポイントって…)

・「スマホで検索できる支援情報ポータルサイトを作る」・「携帯メールの活用」(失礼ですが、すぐできそう…)

・「毎年8月に就業、生活、子育てなど困りごとをまとめて相談できる」(え、8月だけ…)

といったもの。

また、3. 学びの応援の「地域未来塾(学習支援)」は「大学生や元教員など地域住民の協力による」と書いてあります。子どもの居場所づくりの項目も「学習支援や食事の提供等を行うことが可能な居場所づくりを行う」とあり、これは誰がやるのかには言及されていないことも気になります。「場所だけ提供するから地域の誰かボランティアでやってね!」と、丸投げにならないことを期待しています。

もちろん地域の力を活用することはよい事で、今後地域全体で子どもを育てていくのにも大切だと思います。

しかし同時に、どうやったらお金を使わないで展開できるかという意識が見え隠れしていているように感じてしまいます(そもそもこのプロジェクトの目的が、ひとり親家庭の「自立の応援」であることからも伝わってきます)。

児童扶養手当(2.生活を応援)には「財源確保策と併せて」としっかり書かれていますし、「家事援助・保育サービスの充実」は「その他」の項目に小さく書かれているだけ。しかも両方とも「検討する」という記載で具体的な数値目標も年月もありません。

私としては、児童扶養手当や保育サービスは非常に重要で、一番喫緊の課題だと思います。これらは明らかにお金に直結する施策ですが、ぜひより充実した内容にしてほしいと思います(年末までに政策パッケージを策定するらしいので要チェックです!)。

子どもの貧困だけでなく貧困の問題に対し、政府、地方自治体、民間企業や非営利団体、そして市民が恊働するのは必要なことです。ノウハウやスキルがある民間や地域の力を活用するのも、すごく大切なことです。

しかし新自由主義経済のもと、世界中で社会問題の解決の「民営化」が推し進められているように見受けられます。日本でも現在、介護、保育を始めとして行政の福祉サービスはどんどん民営化されています。この流れは、これからも進み、今後、簡単には変わらないでしょう。今回の基金の設立は、それを端的に表していると言えるのではないでしょうか。

先に述べたように、「ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクト」は、今回の基金の設立がすべてではありませんし、すべての計画が発表されているわけではありません。全体の施策としてどうなのか、市民としてきちんと見守り、また協力・恊働し、さらに足りないところ、修正すべきところ、やはり国や自治体が責任をもってやっていくべきところがある場合には声をあげていく必要があると考えています。市民やNPOが、ただのサービス提供者=下請けになってはいけないと思います。

このプロジェクトに期待することもあります。今後、この関連の事業を担っていくために事業の募集や、助成金・委託金の募集が増えると思います。この問題に、これまで何年も前から手弁当で頑張ってきた草の根の小さな団体の皆さんが、より一層そのノウハウと力を発揮できる機会となり、国や地域、社会全体の問題として解決につなげていければいいなと考えています。

プロジェクトについてはまだまだ言いたいことが尽きませんが、

(例)このプロジェクトのホームページ(http://www.kodomohinkon.go.jp/)が公開されていたので、支援情報の検索を試してみたところ、「悩みごと」の項目が多すぎて使いにくい、とか…、

試しに「受験勉強の仕方を教えて」「病気だけどお金も保健証もない」などという悩みと、地区名を入れて検索してみたら「民事法律扶助業務窓口」しか出てこなかったり、とか…。まだ開始直後だからと思いたいです。

ひとり親と子どもの貧困対策の全体像を捉えつつ、今後もこの基金の動きを見守っていきたいと思っています。(おわり)

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