予防接種を(その金額のために)躊躇するということ

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol. 78 ソーシャルワーク・タイムズ vol.142

· 制度政策,児童・教育

今年もインフルエンザの予防接種を気にする季節になりました。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。 

さてインフルエンザの予防接種ですが、その経済的負担は小さくありません。1回3,000円で2回接種(子ども)したとして、5人家族の場合は約3万円!この時期になると予防接種しなくちゃと思いつつ、躊躇してしまう人も多いと思います。 

しかも予防接種してもかかる時はかかるし(軽く済む場合が多いですが)結局、仕事や学校を休むのならば、予防接種しなくてもいいかな?なんて考えてしまったりします。 

自治体や保険組合によっては、補助があるところもあるようですが、まだまだ少ないのではないでしょうか(日本では保険以外の医療費の補助は自治体によって大きく違いますね)。 

インフルエンザだけでなく任意の予防接種などは、経済的な負担が大きい場合は摂取を躊躇してしまいます。経済的な状況は、様々な要因(医療、食生活、ライフスタイル、職業など)と絡み合い、人々の健康状態に影響すると言われていますが、予防摂取もその一つですね。 

トロントではインフルエンザの予防接種が無料で受けられます。保健所の他、市内の中央図書館、市民センターなど市内の6、7箇所で出張して予防接種をしています。予約は必要なく、身分証なども必要ないそうです。 

看護師をしている知り合いに教えてもらったのですが、カナダでは風邪で病院に行っても、インフルエンザかどうかの検査はしてくれないそうで、ほとんどの場合、タミフルなどの抗ウイルス薬も処方してくれないそうです。

これは税金でまかなわれている医療費をなるべく増大させないためなのでしょうか。または、「インフルエンザは、ほとんどの人が寝ていれば治る」という考え方からくるものなのでしょうか。 

このように、めったなことがない限りインフルエンザかどうかの確定診断はしないので、カナダでは冬場に風邪をひくと「フルー(インフルエンザ)にかかったー!」と言う人がいますが、それは(多くの場合)自己判断です(笑)。また、学校での罹患者数が性格には分からないので、インフルエンザによる学級閉鎖などもありません(日本ではインフルエンザが流行すると、罹患者数などを随時発表していますが、少なくともこちらではそのようなことはありません)。そのため実のところは、どのくらいインフルエンザが流行しているかは、わからないのです。 

ちなみに、こちらでは普段、マスクをしている人はほとんど見かけません。クリニックなどでは「熱のある人、咳が出る人はマスクをしてください」と呼びかけて配っているところもありますが、街中でほとんどいません。しているのはほとんど日本人または韓国人ですね。 

人口密度が日本ほど高くないからなのか、それほどインフルエンザが大流行しているようにも見えませんが、それでも予防接種を無料で行うというのは、それをすることは、費用対効果が高いとされているからでしょう。

カナダでは、科学的根拠(エビデンス)のない医療や処置は行わない、という原則があるので、どのようにインフルエンザと予防接種が測定されているのか気になります。 

翻って日本ではインフルエンザが、ほぼ毎年、かなり流行していますが、予防接種は自己負担。予防接種を受けると重症化しなくて済むこともあり、受けたいという人、特に子どもなどが躊躇せずに受けられる仕組みが必要ではないでしょうか。 

なお、オンタリオ州では破傷風、ジフテリアのDTワクチン(子どもにはDTPワクチン)も、抗体を保持するために10年に1度受け直すことが推奨されていて、無料で受けることができます。 

日本では公費負担の接種の場合、接種期間として決められた年齢を超えたり、定期接種になる以前に生まれた子どもには一切公費負担をしない、というスタンスが多いですが、生まれた時期がたった数ヶ月(場合によっては1日)の違いで公費負担が受けられないのも、よく考えるとおかしな話です。 

ある程度、該当年齢に余裕をもたせたり、希望者には補助が受けられる仕組みがあっても良いのにな、と思います。また、なんらかの理由で、決められた期間に予防接種を受けられなかった子どもは、自費になるともっと接種のハードルが高くなると考えられます。 

私も子どもが年長さんだった3月末に小児科に駆け込んで予防接種をしてもらったことを思い出します。あれは何の予防接種だったかしら(笑)。 

ということで、今年はインフルエンザの予防接種を(経済的理由で躊躇せずに)受けてこようと思っています。予防接種について、経済的なことを心配しなくて良いのは、こんなにも精神的に楽なのだなぁと初めて気がつきました。 

なお私は高齢者施設に勤務しているので、基本はインフルエンザの予防摂取が必須。もちろん無料で、ナースが注射してくれます。