「おかしい」と言える強さを—トロントのWomen’s Marchに参加して—

 

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol. 90 ソーシャルワーク・タイムズ vol.154

· AOP

2014年の夏にカナダに来てから我が家では毎年書き初めをしています。2017年も1月2日に書き初めをしました。日本では子供たちだけ冬休みの宿題の「初日の出」や「お正月」など決められた文字を書いていましたが、カナダに来てからは、家族が自由に今年の目標や今考えていることを書きます。字の練習にはなりませんが、家族が「こんなこと考えてたんだー」と思うような意外な言葉が出てきて面白いです。

今年、私から出てきた言葉は「健康」と「直感」。「健康」は30歳を過ぎてから毎年のことですが(笑)それに加えて今年は(さらに)空気を読まずに自分の「直感」を大切にして動く年にしたいと思います。

目標を書くことはそれを言語化(視覚化)して少し近づくように努力できるような気がしています(どっかで読んだことの受け売り)。また自分の好きな言葉を書くことには、癒しの効果があるとも感じます。下手でもいいので、日本の学校でも、好きな言葉を書く機会があればいいのになあ、と思います。そうしたら書き初めも、もっと楽しくかけるのでは。

さて、本日トロントで行われたWomen’s March に参加してきました。ドナルド・トランプ新大統領の就任の次の日に行われました。女性だけでなく様々な属性の人に対する公正な権利を求めたデモです。

世界の500か所で企画され、アメリカのワシントンでは50万人が参加したそうです。日本でも1月20日の夜に東京と大阪で行われました。

今日のトロントでのWomen’s Marchは、主催者発表で参加者は6万人。参加者は女性だけでなく、男性や子ども連れもたくさんいました。デモでしたが警察官の数は少なく、終始ほのぼのした雰囲気でした。

参加者が掲げていたプラカードは、トランプ大統領による差別発言に対抗するものや、女性の権利、先住民の権利を求めるものなど様々な文言が書かれていました。LGBTQ等の権利を訴えるレインボーフラッグも多くみられました。

参加者はニットで編んだピンクのプッシーハット(子猫ちゃんという意味と、女性器という両方の意味をかけている)をかぶっている人も多くいました。

途中、アメリカ領事館の前を通ったのですが、そこだけ多くのガードマンや騎馬隊警官により厳重に警備されており、6車線あるうちの片側3車線がバリケードで封鎖されていたのは印象的でした。

私のソーシャルワーク大学院の友人もたくさんマーチに参加していたようです。マーチの参加は自分自身に関わるということだけでなく、ソーシャルワーカーや福祉に関わる人にとっては、マイノリティの人権(女性はマイノリティでなく半数以上ですが)や、公正な社会を作っていくことが福祉の向上と切っても切り離せない課題であると捉えられています。

翻って日本では、小田原の生活保護ケースワーカーによる、差別的内容が書かれたジャンパー着用が発覚しました。この職場では多くの人がこのジャンパーを購入し、実際に着用していたと聞きびっくりです。この問題に対する多くの反応が(少なくとも私のまわりでは)「これっておかしいよね!(怒)」というもので安心しました。

当時のこの職場で、何人かが「これっておかしいよね」「これは、だめだよね」と声をあげて言うことができていれば、状況は変わっていたのではないかと思います。

おかしいことは「おかしいよね」と言うこと、そして「おかしいものは、変えなくちゃダメだよね」と言うのは、特に日本では、勇気と強さが必要だと思います。さらにいっときの勇気だけでなく、時には言い続ける持久力も必要となります。

そう言うことができるためには、仲間の存在が大きいと思います。

「そうだよねー。わかる!私もそう思ってた」と共感してくれる人が周囲に数人いれば、勇気を持つのに十分なこともあります。その数人の勇気から社会が変わっていくのではないでしょうか。

みなさん、今年は身近なところから「社会を変える」を始めてみませんか。