日本の夏休みの宿題が多すぎる

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.75 ソーシャルワーク・タイムズ vol.137

· 児童・教育

メルマガ読者の皆様、お久しぶりです。夏の間に2年ぶりに日本に帰国しました。その間、この連載も1ヶ月半ほどお休みをいただきました。先日カナダに戻ってきて修論的な最後の論文を提出しました。

これが通れば無事に卒業できるはず、です。

実は子どもたちはまだ夏休み中です。今年(2016年)は9/6から現地校、9/10から日本語補習校が始まります。

今回、日本に帰っていろいろと感じたことがありました。

その中で驚いたのが、中学生の宿題の多さでした(小学生も?)。今日はソーシャルワークとは少しずれますがそこから考えた話をしたいと思います。

この夏、中学生となった娘の同級生に教えてもらったのですが、(公立・私立問わず)夏休みの宿題がとても多いです。

国・数・英・社・理などの科目のドリル・プリント類はもちろんのことそれ以外に、英語で日記を書く&それに関連するポスターを作る理科の自由研究社会ではひとつの国を調べてポスターを作る技術で本棚の製図をする美術では絵を描く家庭科では夏の食材を使った献立を作り料理をする美術館に行って展示に関するレポートを書く身近な人の職業を調べてレポートにまとめる数学新聞を作るなんていうのも…。

夏休みに美術や技術や家庭科の宿題って必要ですか????

これには大げさではなく「宿題が多すぎる!」と思いました。私が聞いたのは東京での話ですが、他の地域ではどうでしょうか。

カナダの学校はこれとは対照的です。

カナダの夏休みは6月末から9月上旬まで2ヶ月以上ありますが、宿題はゼロです。夏休みがちょうど学年末なこともありますが、学年末ではない冬休み、3月に1週間ほどある春休みも宿題はありません。

むしろ夏休みには普段できないことをすると考えられているようです。

日帰りでのスポーツや体験学習のプログラムに参加したり、高校生は卒業単位にボランティアが必須なので、夏休みに行うことも多いです。

カナダでこんなに長い休みの間、宿題がなくて学力は大丈夫?と少し心配になりますが、国際的な学力テストの結果は、世界的にみてもそれほど悪くありません。PISAの2012年度のランキングで日本は総合4位くらい、カナダは10位くらいでした(各項目により異なる)。

カナダでは18歳まで義務教育で、ほぼ受験がないことも夏休みの過ごし方に関係しているかもしれません。高校までは住んでいる地域の学校へ進学します。一部の高校に設けられてある専門コースは選考がありますが、学校の成績と実技が中心でペーパーテストはありません。

大学受験においてもペーパーテストはありません。大学受験では高校の成績が重視されます。

ただし受験がないことには問題もあります。例えば高校までは、州の統一テストで良いランクの学校に行かせるために、その学区に住みたい人が増えるため、地区の物件が不足したり家賃が高騰したりします。

また最近は勉強熱心な親(アジア系が多いことで有名)が家庭教師をつけたり、習い事をさせたりすることが多いともききます(スポーツや音楽教室はもちろん、公文などもあります)。家庭教師の生徒は中高校生だけでなく、小学校性くらいの子もいます。よい大学に行くのには、学校でよい成績をとらなければならないため、ということのようです。

ちなみに日本の学校は、宿題が多いだけでなく部活で学校に行く日も多いですね。カナダでは夏休み中に7月の午前中に補習のようなものがありますが、希望者のみ参加です。それ以外の人(うちの子供たちも含め)一度も学校には行きません。

日本の中学生は、部活(全員参加のところも多い)、宿題、受験勉強と、休み中も本当に忙しそうです。

なお、カナダでは、学校の先生が担当するいわゆる「部活」というものはほとんどありません。試合前の数週間から数ヶ月限定の「クラブ」(マラソン、サッカー、野球、バスケなど)はありますが、それも練習は放課後1時間くらいで終わります。

思い出すと私も中学生の時は、勉強と部活、生徒会活動でとても忙しく過ごしていました(その上、完全週休二日ではなかった)。

(関係ありませんが、私自身、部活の後に家につくまでに、ものすごくお腹が空いてしまうのですが、間食は禁止だったので辛かったです(苦笑)。今、思うと地味な悩みで笑えますが、学生にとっては深刻な悩みです(今でも間食、禁止なのでしょうか。カナダの学校は間食OKです)。

日本とカナダではカリキュラムも、教育方針も大きく違いますが、ざっくり言ってしまうと、日本の方が暗記中心の勉強が多いと感じます。やはり高校や大学で受験があるということが関係しているのでしょう。

それぞれの制度に長所と短所があると思いますが、「日本の学生さんは忙しくて大変だなぁ。ストレスたまるだろうなぁ」と思います。

というか、新学期に児童・生徒の自殺が増えるってかなり深刻な事態…と思います。

ちなみに、カナダの学校はオルタナティブスクール(日本でいうフリースクールのようなカリキュラム)やホームスクリーング(家庭教育)が認められています。

そんな大変な学生時代を卒業しても、長時間労働が待っている日本って一体…と思ってしまいます。日本の教育は、どういう社会を作るため、どういう人材を育成したいというビジョンがあるのでしょうか。そこまで言わなくても、中学生の夏休みの宿題を出すのはいいけれど、包括的に見て全体の量を調整するという視点は学校や教員にあるのでしょうか(素朴な疑問)。

最近、各国や地域のソーシャルワークや福祉制度、教育制度を考えるときに、国の方針や、人々の価値観や意識形成の過程を考えなくてはならないな、と思うことが多々有ります。今後も身近なところから、日本とカナダの社会や福祉や教育を考えていきたいと思っています。