マリファナの合法化が決定

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.64 ソーシャルワーク・タイムズ vol.119

· 制度政策

寒暖の差が激しいトロントです。今週はとても暖かい日が続いて、みんな突然Tシャツにショートパンツになりました。その柔軟さにびっくりしますが、家の中は常に暖かいので衣替えという概念がほとんどないためでしょうか。なお、防寒着を準備したり、雪に備えるための「冬支度」の意識は高いと思います。冬支度をしないと死に直結するので(笑)。

さて先日、カナダでは2017年春にもマリファナ(大麻)が合法化されることが発表されました(後日記載:その後2018年7月1日の解禁になりました)。現在でも医療用のマリファナ(鎮痛剤などとして)使用されていますが、今度合法化されるのは個人の嗜好品としてのマリファナです。

使用、一定程度までの所持、そして栽培が可能になります。

現在、カナダでは嗜好品としてのマリファナの使用は許されていないものの、よっぽどのことがない限り使用しても処罰されることはないというのが現実だそうです。マリファナは独特な匂いがあるのですぐにわかるのですが、私も何度か道で遭遇したことがあります。カナダは室内はどこも禁煙、道路では自由に喫煙できるのです。(カフェやバーが全面禁煙なのは、タバコを吸わない人には嬉しいですが、混んでいる道路でも喫煙されるのはちょっと困ります…。)

私の周りの人は概ねマリファナ合法化に賛成しているようです。積極的に喜んでいるというよりは「なんで今まで合法じゃなかったの?」という感じでしょうか。いままでとそんなに変わらないよね…という感じ。

一方で、カナダに住む日本人はびっくり仰天!「カナダどうなっちゃってるの?!」「こどもたちが心配」という意見も聞きます。

カナダでは、マリファナは、麻薬などの薬物とは全く違うものだと認識されているようです。日本に住んだことのあるカナダ人の友人は「日本で、マリファナと薬物を同じようなものだと考える人が多いのにびっくりした!」と言っていました。

今回マリファナを合法化する目的は「ハームリダクションアプローチ」を採用して、薬物依存などの問題を減らすことにあるそうです。特に現政権は、マリファナを合法化することによって、(特に10代の若者を)危険な薬物から守る、という点を強調しています。(ハームリダクションのアプローチについては2016年3月20日に配信したメルマガをご参照ください。)

現在、マリファナを手に入れるには非合法な形で購入することになります。それは時に、麻薬の売人に近づいたり、危険な薬物に手を出すことにもつながります。またその場合、年齢などを規制することはできません。その結果、依存症になったり、最悪の場合、不適切な使用により死亡する若者もいます。

一方、オンタリオ州ではタバコ(とお酒)が可能になるのは19歳から。購入するのには年齢のわかる身分証明書が必要です。(タバコやお酒の自動販売機はありません。そもそも自動販売機というものがほとんどありません。)

マリファナが合法化されれれば、基本的には(もしタバコと同じであれば)19歳以上の人しか購入できなくなります。正規のルートで購入できる方法があれば、闇マーケットに近づく人も減るでしょう。さらにマリファナの使用に関する教育や指導、タバコやマリファナの禁煙の支援などもオープンにできるようになります。

この発表の際に、トルドー政権では、今後もこのような「科学的根拠に基づく政策」を推し進めていくことを強調していました。

なお少し話が少しずれるのですが、お酒やタバコの販売や値段は州と政府が管理しています。

お酒の場合にはそれが極端で、アルコールを販売しているのはオンタリオ州の経営する「LCBO」という名前のショップか、「Beer Store」というチェーン店のみ。LCBOがLiquor Control Board of Ontario(オンタリオ アルコール管理局)の略だと知った時には、思わず笑ってしまいました。

当然、価格競争はほとんどなく、同じような種類のお酒が同じような値段で販売されています。昨年から大きなスーパーではアルコールの販売が解禁されましたが、ほんの一部らしく、私はお目にかかったことはありません(2017年6月現在、スーパーでお酒を目にする機会が少しずつ増えてきました)。

ちなみに、農業や畜産を守る為に、農産物や肉、乳製品の値段もコントロールされています。卵や肉や乳製品など、日本で想像していたよりも高額です(12個入りの卵の平均の値段は4ドルほど)。ちなみにトロントの物価は高いですが、最低賃金も日本より高いです(現在11.40ドルですが、2019年までに最低賃金が15ドルまで上がることが発表されました)。

今後、カナダでマリファナが合法化されたのちに、本当に薬物依存の問題が改善するのか、という点はしっかりと見ていく必要があるでしょう。そして個人的には、カナダの社会や福祉や教育がどのように変わっていくかに注目していきたいと思います。

カナダでマリファナが合法化されても、他の国や地域ではもちろん禁止のところが多いので、国境を越える人はその取り扱いに注意しなければなりません。それでは今回はこの辺で…。