アルゴンキンのキャンプで考えたこと

ソーシャルワーク・タイムズ vol83 子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.29

· 貧困,児童・教育

先日、夏休みを利用してアルゴンキン州立公園に行ってきました。

トロントから北に4時間ほどの場所にあり、東京都3つ分の広大な森が残されています。

アルゴンキンにはカヌーでしか行けない奥地のキャンプ場もあるのですが、今回は子ども連れという事もありオートキャンプサイトに宿泊。カヌーや湖で泳いだり、満点の星空を楽しみました。

今回はそこで印象に残ったことと考えたことをご紹介します。

一つ目は、生態系の保護に力をいれているということです。

アルゴンキンにある博物館でも、ビジターセンターで毎日子ども向けのプログラムがやっているプログラムでも、生態系とその保護が強調されていました。

カナダではバーベキューでは炭ではなく薪を使用するのですが、外来種の虫の侵入を防ぐためキャンプ場で購入するか、証明付きの地元の木材しか持ち込むことは出来ません。

ちなみに、アルゴンキンには熊やオオカミがおり、キャンプ場では夜、食べ物やゴミや、食器を外に出しておくことはできません。少量の残飯も残っては困るので、外で食器を洗う事も出来ません。洗う場合はバケツで、その水はトイレに捨てなければならないとのこと。ゴミステーションも動物が明けられないような重い鉄の蓋とハンドルがついていました。

オンタリオ州では人口が増えており、開発も盛んですが、一方で、自然や生態系を守る取り組みもなされていることが分かりました。

もう一つ印象に残ったのが、キャンプに来ている人種の関係です。

オンタリオ州の人種構成は白人が70%、約27%が「visible minority」と言われるマイノリティ(白人と先住民族以外)です。残り3%は先住民族です。トロント周辺の市を含むGTAエリアになると約50%がvisible minorityです。

しかし、キャンプに来ているのは見た目は「白人」が9割以上。

ヨーロッパからの旅行者も多いらしいので(こちらもほとんど白人)実際のところは分かりませんが、印象としては「白人多いな〜」ということでした。(時々「日本人かな、中国人かな…」という方を見かけました。)

ここで改めて感じたのは「キャンプに来る階層」についてです。

キャンプに行くことはお金がかかります。車やテント、寝袋などのキャンプ道具をもっていたり、借りたりしなければなりません。また親に「キャンプに行く」というアウトドアマインドがあることが必要です。

最近「キャンプに行ったり、アウトドア活動をする子どもは成績がよい」というような記事を見かけます。確かにアウトドアの活動は、普段のストレスから解放されたり、新しい経験をして普段使わない思考を使ったり、新しい知識を得たり、チームワークを学んだりするのに最適です。

しかし「キャンプに行く子→成績がよい」というデータを見る際には、前提としてアウトドア活動に参加することが出来る子ども(世帯)が、どのような階層にいるのかを考えるべきです。家族でキャンプやアウトドアのレジャーに行く世帯は所得が高く、子どもの教育に積極的に関わる金銭的、精神的余裕があることが多いのです。キャンプ場に白人が多いことはまさにそれを表しています。カナダでは「白人の特権」と言われていて、白人の方が学歴や所得が高いことが多いのです。

これらのいわゆる「貧困の連鎖」による、子どもの経験の差はどのように解消できるでしょうか。日本での子ども向けサマーキャンプもありますが、高額なところが多く「姉弟2人申し込むと10万を超えるのか…」と考えてしまうと躊躇していまいます(実体験)。

カナダでは時々、収入に応じた補助付きのアウトドアキャンプがあります。それに対する民間企業や個人の寄付も多いです。例えばカナダのコーヒーチェーン最大手のティム・ホートンでは、全国で子どもキャンプへの寄付を募り大規模に支援しています。

日本でも、クラウドファンディングなどを利用した寄付活動をしている団体も目にするようになってきました。このような動きが広がって、どのような子どもたちも気軽にアウトドア活動に参加できるようになったり、楽しい経験をたくさんできるようになればいいなと思います。